高校の時のお話です。
私が2年の時の校舎は、何かでそうなくらいにボロボロでした。
よって、冬の暖房も煙突付きのストーブでした。
うちの地理の教師はいわゆるマッチョマンで、教室に入るときはなぜか飛んで入ってくるんです。
しかも常に。当たり前のように。さわやかに。
ドアの所から教卓まで、おそらく2メートルぐらいはあるであろう距離を、走り幅跳びのように一歩で飛ぶんです。
ある日、その教師を痛い目に合わせなきゃいけないと言うことになりました。
そこで昼休みの段階から、ストーブの上に缶コーヒーをおいておきました。
30分ぐらいは経ったでしょうか。
そろそろ授業が始まるので、友達が100度はあろう缶を教卓の上に移動することになりました。
一応、制服の袖を使って缶を持っているのですが、あまりに熱せられているために、熱さが伝わってきているようです。
缶を置いて数分が経過。
いつものように教師が宙を舞いながら入ってきました。
教師の目はすぐに教卓の上の缶コーヒーへ。
「だれだ!こんな所に缶を置いたのは!」と言いつつ、缶コーヒーを持ったのです。
その瞬間!教師の眉間にシワが寄り、缶を持つ手が小刻みに震えました。
しかし、飛んで入ってくるだけはあります。
一言も発せずに、グツグツ言いそうな缶コーヒーを、近くの棚まで運んでいこうとしています。
生徒は必死に笑いをこらえています。
教師の顔はさらに険しくなり、まるで死期が迫っているようです。
首筋の血管の浮き出方は、明らかに息を止めているのでしょう。
缶を棚に置くと、何事もなかったように、
「昨日の朝日新聞読んだ人?」
といったのでした。
あんた、凄いよ。